2014年3月23日日曜日

最後の1頭

22日、単独でシカ猟に行く。前回は全然ダメだったが、自分として納得がいく形で獲りたいという気持ちに変わりはない。今月末で猟期も終了し、シカ猟も恐らく今回が最後になるだろう。目星を付けておいた夕張のとある林道にはあちこちに古いシカの足跡があった。

始めはスキーを履いていくが、雪が締まっているので途中からつぼ足に変える。30分ほど歩き、尾根に近付いたところで5頭のシカの群れを発見する。あっという間に尾根伝いに逃げていき、すぐに後を追ったが深い沢に下ってしまい追跡をあきらめる。その後も反対側の尾根上に2頭を発見するが、動きが速く、全然撃てないままここは敗退。

続いてすぐ近くの林道に移動する。ゲートの少し先から雪がたまっていて通れない状態。スキーを履いて林道を歩いていくことにした。ここもシカの古い足跡がたくさんある。

30分ほど歩いたところの松林でエゾライチョウを見つけた。しばらく見とれていたところ、すぐ先の林道の曲がり角から「グルル・・・」という声が聞こえた。何かの聞き間違いかと思ったが、またすぐに「グルル・・・」という声が聞こえてくる。曲がり角の先に何がいるのかわからないが、これ以上先に来るなという警告なのかもしれない。何事も無かったかの如く速やかにここを立ち去った。

夕張を後にして前回来た場所に到着。駐車スペースに車を置き、スキーを履いて山へと入る。先週自分が付けたトレースがまだ残っている。何回か来ると自然にそこの地形がわかってくるものである。

山に入ってすぐにシカの群れを発見するが、シカもこちらの姿に気が付いて正面の尾根を一斉に駆け上っていく。これはもうダメかと思いながら川沿いを進むと、対岸の急斜面に1頭のシカを発見した。こちらに頭を向けて植物を食べている。非常に狙いにくいポジションだ。

相手の死角になるように隠れながらゆっくりと這うようにシカへと近付く。距離が100mを切ったところで狙いを定めて引金を引く。シカは斜面を転がるようにして川へと落ちていった。

獲物は1歳のメス。弾は前足の付け根を貫通しており、ほぼ即死状態。たまたま当たり所が良かったのだと思うが、自分としても納得がいく形で捕獲することができた今猟期最初で最後の1頭である。とりあえずその場で解体作業を行う。

1年振りの解体ということもあってどうもうまくできない。そうこうするうちに手元がずれて左手親指をナイフで切ってしまった。出血はすぐに止まったが、急いで札幌へ帰って救急病院へ行く。傷はそれほど深くはないが、傷口が開かないよう2針ほど縫い、念のため破傷風のワクチンを打ってもらった。あせって何かやると本当にロクなことがないが、これも自分の不徳の致すところである。特に単独猟はリスクを全て自分が負わなければならないので、もっと慎重にならないとダメだと思う。3年目が終わってまだまだ新米の域を抜けていないことを実感した。

今猟期を振り返って色々と考えてみた。流し猟では全然獲れなくても、山に入ればシカは間違いなくいる。生息数が減っているというよりはシカの行動パターンが変わっているといった方がいいのかもしれない。よく言われる駆除圧の問題についてもきちんと分析する必要がありそうだ。今までのやり方が通用しないのであれば、当然、ハンター自身がやり方を変えていかなければならないのだと思う。果たして来期はどんな年になるのだろうか・・・

10 件のコメント:

  1. 確かに、鹿の行動パターンが変わって来てるのだと思います。
    1年生猟師の自分が言うのもなんですが^_^;
    と言いつつも自分なりに分析しなければ鹿は中々獲れないのではないかと思ったりして‥‥
    特に散弾組は射距離がいいとこ100mだと思います。
    しかし鹿達は我々が100mくらいまで接近するとテケテケと逃げるか撃ダッシュで消えてしまう。
    その度にゼロイン150mで取ったらどうかな〜って考えたりしてます!
    そうしたら射撃のチャンスも増えるのではないかなと思ってます。
    写真で見るとかなりの痛々しいですね^^;大事にして下さい!

    返信削除
  2. 早来猟師さん、コメントありがとうございます。
    ご指摘の通り、今期は特にシカの警戒心が強いように感じます。前期とは違って、林道を流していてもシカが全然出てこないです。少しでも人の姿が見えると物凄い勢いで逃げていきます。忍び猟でもよほど慎重に近付かないとかなり難しいですね。

    今日、病院に行ってきました。傷口もふさがっており、29日には抜糸できるようです。俺ってホントにドジだなとつくづく思います。単独猟はリスクを全部自分が背負わなければならないので、これからはもっと慎重にならないとダメだなと反省の念しきりです。

    返信削除
  3. 難しいと言いながらも獲るあたり、流石ですね。
    明後日、師匠に付いて山に入ります。
    今シーズンラストですね。
    怪我、お大事に。

    返信削除
  4. 新米猟師さんが獲った鹿は後ろ足引きずるような動きをしてませんでしたか?
    なんとなく自分が逃してしまった鹿ではないかと思ってみたり

    しかし同じような場所で猟をしているだけにどこに行ったのかわかってちょっと面白いですね

    こちらは早朝から頑張りましたが、斜面を移動している時に滑り落ちて銃をぶつけてしまい、その後鹿を発見して撃つもハズレ…どうやらスコープが狂ってしまった模様
    そんな感じでした

    怪我は大丈夫ですか?
    切れ味のいいナイフも良し悪しなんでしょうか…w

    返信削除
  5. TOMOおやじさん、コメントありがとうございます。
    私の場合、たまたま良い場所にシカがいただけかなと思います。失敗を繰り返しながらどのように獲物に接近したらよいか何となくわかってきたというのはあります。
    いよいよ今猟期も最後ですが、十分気を付けて猟を楽しんできて下さいね。

    返信削除
  6. しょうずさん、コメントありがとうございます。
    私が撃った弾はシカの左前足の付け根から入って反対側に抜けたのですが、右後足のスネあたりにも新しい弾の跡がありました。もしかするとしょうずさんが逃した獲物だったのかもしれませんね。

    先週も同様でしたが、あの場所は昼頃からシカの行動が活発化するような気がします。尾根の正面から近付くとすぐにシカに見つかりますので、左から大きく回り込みながら近付いた方がいいのではないかと思います。

    ちなみに切れないナイフほど危ないものはありません。解体後半になると切れ味が鈍ってくるので気をつけた方がいいでしょう。そういう意味で今回のケガは良い勉強になりました。

    返信削除

    返信削除
  7. なるほど…自分は朝イチに近い時間に入りまして、当然のことながらその時間帯は尾根の正面には1頭もおらず、寝屋のあった頂上近くで2度ほど目撃がありました
    こちらも鹿道を追ったのですが、まったく追いつけず…
    しかしそれから数時間後で鹿は戻ってくるものなのですね
    自分的には人間に追われたのだから半日とか一日ぐらい戻ってこないものなのかと思っていましたが、また一つ勉強になりました

    確かに切れないナイフは危ないですね…
    切れない→力を入れる→ざっくり…というパターンが容易に予想されます
    ちなみに自分は錆びるんだけど切れ味のいい鋼のナイフを使っています
    新米猟師さんはどんなナイフを使っていますか?

    返信削除
  8. しょうずさん、コメントありがとうございます。
    あの尾根の正面は南向きなのですが、私の経験則ではシカは南向きの斜面に付くことが多いです。シカも日当たりがいいところが好きなんでしょうね。それにしてもどのルートを通って戻ってくるのか未だに読めません。

    ちなみに私が使っているナイフですが、解体用には先輩猟師からもらったスキナー、肉を小分けにするときはオピネルを使っています。オピネルはカーボンスチールなので一度使うとすぐに錆びますが、研ぐとすぐに切れ味が戻ります。あまり高いナイフは必要ないと思いますが、使っているうちに愛着がわく物なので1本位はいいものを持ちたいですね。

    返信削除
  9. グルルの声が聞こえましたか。
    久保さんが、その声をどう判断するかで、安全が決まると言ってました。
    近づかなくて。よかったですね。

    返信削除
  10. 清石川さん、コメントありがとうございます。
    最初の声が聞こえた瞬間、何か違う気配を感じました。それでも威嚇という感じではないんです。自分の存在を教えてくれているような声でした。恐いという感覚は全然なく、「ああ、知らせてくれてありがとう」といった感じでごく自然にその場を去りました。それにしても、あのエゾライチョウがいなかったらヤツに遭遇していたかもしれません。エゾライチョウに感謝です。

    返信削除