30日の早朝、道北の猟場へと向かった。先々週に初めて訪れたこの地、猟果は無かったが、2日間走り回ってシカのいるポイントは大体わかった。期待を胸に車を走らせる。
それもつかの間、期待が高まる一方で天気は急変。おまけに昨夜からの降雪で一面真っ白。車のブレーキが効かないほど路面は凍結している。逆に不安が高まる中、山の奥の林道へと向かった。
ほどなくして道路上にシカとは明らかに異なる足跡を見つけた。クマのものである。すっかり冬眠しているものと思ったが、冬でも活動しているようである。結局、午前中は撃つ機会もなく終了。
午後からも有望そうなポイントを走り回るが、決定的なチャンスに恵まれない。時刻は15時30分、ここでダメなら帰ろうと入った林道のどん詰まりで1頭の雄シカがこちらを睨みつけていた。
私が車のドアを開けた瞬間、ものすごい勢いで雄シカが斜面を駆け上がり始めた。ほぼ条件反射の状態で撃った1発が雄シカの右足に当たり、動きが止まる。2発目は腰のあたりに当たり、雄シカがその場に座り込む。雄シカは必死に逃げようとするが、すでに勝負はついていた。サベージの薬室にゆっくりと実包を入れ、首のあたりに止め矢を入れる。雄シカはゆっくりと動かなくなった。
森の守り神のように凛として立ちはだかる見事な雄シカだった。間もなくこの林道も雪で完全に閉ざされることだろう。山を降りる頃、あたりはすっかり暗くなっていた。