始めはスキーを履いていくが、雪が締まっているので途中からつぼ足に変える。30分ほど歩き、尾根に近付いたところで5頭のシカの群れを発見する。あっという間に尾根伝いに逃げていき、すぐに後を追ったが深い沢に下ってしまい追跡をあきらめる。その後も反対側の尾根上に2頭を発見するが、動きが速く、全然撃てないままここは敗退。
続いてすぐ近くの林道に移動する。ゲートの少し先から雪がたまっていて通れない状態。スキーを履いて林道を歩いていくことにした。ここもシカの古い足跡がたくさんある。
30分ほど歩いたところの松林でエゾライチョウを見つけた。しばらく見とれていたところ、すぐ先の林道の曲がり角から「グルル・・・」という声が聞こえた。何かの聞き間違いかと思ったが、またすぐに「グルル・・・」という声が聞こえてくる。曲がり角の先に何がいるのかわからないが、これ以上先に来るなという警告なのかもしれない。何事も無かったかの如く速やかにここを立ち去った。
夕張を後にして前回来た場所に到着。駐車スペースに車を置き、スキーを履いて山へと入る。先週自分が付けたトレースがまだ残っている。何回か来ると自然にそこの地形がわかってくるものである。
山に入ってすぐにシカの群れを発見するが、シカもこちらの姿に気が付いて正面の尾根を一斉に駆け上っていく。これはもうダメかと思いながら川沿いを進むと、対岸の急斜面に1頭のシカを発見した。こちらに頭を向けて植物を食べている。非常に狙いにくいポジションだ。
相手の死角になるように隠れながらゆっくりと這うようにシカへと近付く。距離が100mを切ったところで狙いを定めて引金を引く。シカは斜面を転がるようにして川へと落ちていった。
獲物は1歳のメス。弾は前足の付け根を貫通しており、ほぼ即死状態。たまたま当たり所が良かったのだと思うが、自分としても納得がいく形で捕獲することができた今猟期最初で最後の1頭である。とりあえずその場で解体作業を行う。
1年振りの解体ということもあってどうもうまくできない。そうこうするうちに手元がずれて左手親指をナイフで切ってしまった。出血はすぐに止まったが、急いで札幌へ帰って救急病院へ行く。傷はそれほど深くはないが、傷口が開かないよう2針ほど縫い、念のため破傷風のワクチンを打ってもらった。あせって何かやると本当にロクなことがないが、これも自分の不徳の致すところである。特に単独猟はリスクを全て自分が負わなければならないので、もっと慎重にならないとダメだと思う。3年目が終わってまだまだ新米の域を抜けていないことを実感した。
今猟期を振り返って色々と考えてみた。流し猟では全然獲れなくても、山に入ればシカは間違いなくいる。生息数が減っているというよりはシカの行動パターンが変わっているといった方がいいのかもしれない。よく言われる駆除圧の問題についてもきちんと分析する必要がありそうだ。今までのやり方が通用しないのであれば、当然、ハンター自身がやり方を変えていかなければならないのだと思う。果たして来期はどんな年になるのだろうか・・・