26日、同じ部会のYさんとシカ猟に行くことになった。Yさんは狩猟歴30年以上のベテランであり、独自の理論によって確実に結果を出す凄腕の猟師である。今回Yさんに連れて行ってもらおうと思ったきっかけは、ここ2年ほど毎年1頭しか獲れておらず、自分にその原因があるとすれば、どこをどうなおしたらいいのか、しっかり指導してもらおうと思ったからだ。
Yさんのランクル80は7.5インチもリフトアップしている。多少の悪路ではびくともせず、どんどん山奥へと進んでいく。流し猟のポイントはシカが走る前にこちらがシカを見つけること。撃つより何よりこれが一番難しい。また、シカを見つけてもすぐに車を止めず、通り過ぎてから何気なく車を降りてすかさず撃つ体制に入るようにした方がいいとのこと。
シカに出会わないのでシカ笛を吹いて様子をうかがう。遠くからシカの追い鳴きが聞こえてくる。どうやらこちらの様子をうかがっているようである。声が近付いてくると、相手もやる気になって向かって来るのがわかるのだが、今回は近付いてくる気配はない。こうした駆け引きもシカ猟の醍醐味だ。
流している最中に2頭のシカが出た。斜面を駆け上がり、こちらの様子を伺っている。距離は50m。Yさんから早く撃てといわれるが 、焦ってサベージの弾倉がなかなか入らない。このままでは逃げられると思った瞬間にYさんがすかさず仕留めた。大きなメスだった。
Yさんに背中からの解体方法を教えてもらう。内臓から開くと雑菌がナイフに付くので背中から解体した方が良いとのこと。最初にロースを取る。ロースは脂を付けたままにした方が焼肉にした時にはおいしくなるらしい。もも肉はシンタマや外モモを取ったあと仰向けにして内モモを取る。内ロースは背骨の下側を削ぐように取るが、腹腔に穴を開けないよう繊細な作業になる。自分はいつも内臓を出してからやっていたが、確かにこちらの方がずっと衛生的だ。
車はさらに林道を進んでいく。急斜面の下は深い谷底である。ところどころ路肩が崩れそうなきわどい部分を通過する。途中でシカを見つけ、引き金を引くも撃鉄が落ちない。あせって薬室に弾を送るのを忘れていた。あとでYさんから「さっきの1発目はどうしたの?」と聞かれる。しっかりばれていたようだ。初心者並みのミスというか全く情けない限りである。
一面ススキの原っぱのように見えるが、これでも林道である。獣道となっているかすかな踏み跡を見つけながら進んでいく。車高が低ければ進むことはできないだろう。
道の真ん中に木が倒れていて先に進めない。チェーンソーで木に切れ目を入れ、ウインチと滑車で引っ張って木をよける。Yさんのランクルには自力で脱出するための色々な道具がたくさん積んである。
尖った大きな石を踏むとタイヤがパンクすることもあるという。石を転がして道を開けながらさらに奥へと進む。
水の流れで林道の途中に亀裂ができている。スコップで亀裂を埋めて乗り越える。リフトアップしている車でなければできない技である。次から次へと難所が出てきて、これをひとつづつクリアしていく。これぞ究極の流し猟である。
本線まであともう少しのところで大きな亀裂にぶつかる。さすがにこれより先はどうやっても進めない。やむなく来た道を引き返す。戻る途中で2頭を見つけたが、発砲寸前に走られてしまい、惜しくも逃してしまう。