2013年10月24日木曜日

エゾシカ料理試食会

22日、私が所属する日本技術士会北海道北海道本部の「エゾシカ研究会」に出席。この研究会ではエゾシカの有効活用、特に養鹿を新たな産業とすることをテーマとして研究を行っている。今回はエゾシカの様々な部位を使った料理や牛肉との食べ比べによって今後のエゾシカ肉利用の可能性を探るという趣旨によりホテルKKR札幌にて開催。料理長に特別にお願いして実現可能となった。
 
今回のメニューはデザートも含めて7種類。デザート以外は全て肉料理である。メニューの名前はフランス語を主体として命名されている。
 
はじめは「エゾシカ肩ロース肉のスモークとレバームースのサラダ仕立て」である。肩ロース肉は10日間ソミュール液に漬け込んでからスモークして数日間真空パックで熟成。スモークの香りが味わい深い。また、レバーペーストは氷水で血抜きしてからミキサーで牛乳と豚の背脂で混ぜてバターを加えて仕上げたもの。レバーの臭みは全く無く、パンに付けて食べるととても美味しい。 
 
続いて「エゾシカモモ肉のシャリアピンパネ」である。ちなみにシャリアピンは肉をタマネギのみじん切りに漬け込む手法で、パネはカツレツのこと。エゾシカモモ肉は脂肪が少ないので油で揚げた料理が合うらしい。何と言ってもクリームソースが絶品で、添えてあるバターライスとアスパラも肉とソースに良く合っている。今回の料理で私が一番おいしかったのはこれだと思った。 
 
続いて「エゾシカスネ肉のブレゼ」である。ちなみにブレゼとはフランス語で「煮込んだ」という意味。デミグラスソースでスネ肉を4時間煮込んでおり、スネ肉とは思えないほど柔らかい。付け合せにニンジンのグラッセ、サヤエンドウ、クリが添えられている。ちなみに鉄分が多いシカ肉には甘い野菜や果実が良く合うとのこと。 
 
 ブレゼに添えられた「エゾシカコンソメ」である。牛骨の髄を5時間煮込んだものをベースにシカ肉の端材をじっくり煮込んだもの。卵白を入れて濾すことで澄んだスープになるらしい。エゾシカのつくねとタピオカが入っている。あまりにも美味しくてもう言葉が出ない。
 
今回のメインである「エゾシカロース肉の低温ロースト」である。中心温度が48~49℃になるように焼き上げる。肉の色はきれいな赤色だが、温度が少しでも高いとこういう色にはならない。これがシカ肉かと思うほど素晴らしい味。ちなみにこの後、道産牛ロース肉と食べ比べてみたが、シカ肉とは全く違うジャンルのものであることがはっきりわかった。もちろん牛肉もとても美味しい。 
 
最後に出てきたのが「エゾシカバラ肉のカレー」である。エゾシカ肉で唯一脂肪の多い部位であるバラ肉を料理長特製のカレールーで煮込んだもの。これが本物のカレーなんだと思わせるほどの絶品。いつも使わずに捨てていたエゾシカバラ肉だが、何だかとてももったいないことをしていたと反省の念しきり・・・。
 
 料理長から今回の料理について一つづつ丁寧な説明があった。食材としてのグレードでは牛肉よりもシカ肉の方が圧倒的に上であること、牛肉に比べてシカ肉はデリケートであり、と畜や血抜きの状態で肉質がかなり異なってくること、シカ肉の消費拡大のためには一般家庭のおかずとして手軽にシカ肉料理が作れること、など日頃の思いを語ってくれた。また、料理長は「常に安心、安全、正直な料理を作ることを心掛けている」とのこと。今回の料理がまさにその答えなんだと思う。
 
今回は特別に低料金でやっていただいたが、通常この内容であればその3倍はかかるらしい。それだけに料理長が趣向を凝らした自信作が数多く並んでいた。やはり料理というのはシェフの腕に大きく左右されるものであり、特にシカ肉ではその傾向が顕著に現れる。当然、その料理もプロが作れば素晴らしいものになるし、何も知らない素人が作れば不味くもなる。プロしか扱えないものではなく一般家庭で定着させるにはどうしたらいいか、エゾシカ肉消費の今後の方向性について非常に参考になる試食会であった。 

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